京都のネットベンチャー「はてな」(近藤武蔵社長)などをはじめ、スタートアップ系IT企業のあいだで「自作サバ」が大ブームだ。「意外にかんたん」「自分の好みどおりに作れる」「好きなときに好きな量調達できる」というのがウケているようだ。しかし、識者のあいだでは
「安易に自作サバに飛びつくのはキケン」
と警鐘を鳴らす向きもある。
はてなでは、本社の京都移転以来自作サバに力を入れている。やはり、サバずしのおいしい関西の文化に引かれたのか。週末ともなれば社員総出で日本海まで輪行し、サバを釣り上げては1Uバッテラなどを作り舌鼓を打つという。餓死寸前の社員の福利厚生や、最終食料であるしなもんの延命に役立つと好評だ。
しかし、こうしたITベンチャーの安易な「サバブーム」に待ったをかけるのが、関サバ釣って三十年のベテラン漁師・関孫六さんだ。
「サバは光り物なのでどうしても足がはやいという欠点がある。安易に釣って家に持ち帰ると途中で腐り、知らずに食べれば当たってしまうこともある」
というのだ。
関さんは、若いIT系会社員らが自作サバに浮かれるのを見るたびに「気をつけなさい。素人はメーカー製品を買ったほうが安全」とさとすようにしているが、
「足が速いのはサーバーとしては好都合」
とまったく聞き入れられず当惑しているという。老人の知恵に聞く耳もたぬベンチャー企業人に、亡国の兆しをみた。