清朝末期、皇帝の一家庭教師でありながら政治にも絶大な影響力をもった伝説の人物・人民元(じん・みんげん)…。彼のネットワークは日本を含む全東アジアに及んでいた。歴史上のあらゆる偉人たちは、すべて人民元の「秘密教科書」に基づく洗脳教育を受けていたのだ! 明治維新も清朝崩壊も、そして太平洋戦争も、すべて彼の描いた壮大なプロットの一部にすぎなかった。現代アジアの原型をたった一人でつくりあげた怪人の実像、そして彼の教科書にはいったい何が書かれていたのか。その謎に迫るドキュメンタリー。
いままでタブーとして一切触れられてこなかった分野に切り込む意欲的な著作。超教師・人民元の生い立ちから、清朝崩壊時に失踪したあとの足取りまで、読者は今まで知らなかった歴史の裏側を直視することになるだろう。伊藤博文の通っていた寺子屋でさえ、人民元の弟子・人民服(じん・みんふく)が教鞭をとっていたなど、ひとつひとつ丹念に事実を追いかけていく著者の真摯な姿勢には脱帽である。
また「人民元の教科書は死海文書の抄訳だった」という著者の新解釈は、学会でも議論を巻き起こすこと必至。これまでの、そしてこれからのアジアの行く末を占うには必読の一冊だろう。
- 2005
- 09/14 15:21