困っている非モテ童貞を楽にしてあげたい─そんな善意をかたちにしたバッジの配布が、都内の理美容院でいっせいにはじまった。つけていれば髪型をどうするかいちいち聞かれなくてすむ
「聞かないでバッジ」
だ。利用者のあいだでは「“今日はどうしますか”に困らなくてすむ」と早くも評判になっている。
配布をはじめたのは都内1,500の理容室・美容院からなる東京都理容美容室組合(代表:狩須磨男理事長)。きのこカットのメガネ男子が耳をふさぎ「聞かないで!」と叫んでいる図案のバッジを200万個用意した。発案のきっかけは加盟店舗で、店員が気さくに話しかけると
「今日は、もみあげはどうしますか?」
「…ふ、ふつうで」
「はい? どんな“ふつう”にしますか?」
などとやりとりするうち答えに詰まり、泣きながら店を飛び出す客が複数報告されたこと。「世の中にはカットのしかたも指示できない“おしゃれ弱者”がいるのだと知り、救済しなければと思った」と狩須理事長は語る。
バッジをつけて入店した客には店員が終始無言で対応。言われなくても前髪は自然なところで分け、適当にすき刈りにしたうえ眉も切り揃えてくれる。洗髪の最中には床屋の伝家の宝刀である「かゆいところはありませんか」とも聞かないなど、配慮が行き届いている。組合ではバッジの効果で、実家のお母さんにカットしてもらっている非モテ童貞など潜在市場の掘り起こしを見込む。
バッジは常時、理容室・美容院店頭で配布中。希望者は店員に
「ぼく童貞です」
と伝えてほしいとのことだ。