芥川賞も受賞したことがある無名の新人・平野啓一郎氏が、大ファンだという特撮作品へのオマージュ仕立てで著わした、新境地のライトノベル作品。今回は、ありがたいことに献本を戴いたので書店の棚に並ぶ前に拝読することができた。読者諸兄ともこの感動を分かち合うべく、書評をお送りしたい。
あらすじ:
アルファブロガー・梅田望夫はウェブ人間である。悪の秘密結社・グーグルに捕らえられ、脳みそまで洗脳されたあと放逐された。主エネルギーは腰のベルトに貼ったGoogle AdSenseの収益。これとAmazon Associateだけで、邪悪なことを一切せずに新世界秩序を打ち立てるべく、日夜blogを更新し続けている(ときおりさぼる)。敵は集合知に逆らう旧体制すべて。必殺技「blogコメント欄炎上」と「2ちゃんねら祭り」で、すべての悪を打ち砕け!
…登場人物が洗脳された人間らしく脳天気でバラ色なウェブ礼賛論を語るあたりに、強烈なリアリティを感じた。フィクションにしておくには惜しい気がする。時間がなくまだ途中までしか読み進んでいないが、後半では梅田望夫が欧州での戦いに転戦し、代わりに「ウェブ人間2号」として佐々木俊尚が登場すると聞く。今後どのような陰謀論が展開されていくのか、ページをめくる手が期待感でふるえる。
「ウェブの登場・発展程度では人間は善き存在に進化しない」
という事実から目を背けたい向きにはぜひ読んでほしい。現実逃避に最適な一冊だろう。