コンピュータ業界で「次のプログラミングパラダイムを提起するもの」と注目を集めている言語
「HOCaml(ホッカムル)」
を取り上げた、国内でもはじめての一冊である。HOCamlについてはインターネット上でも日本語の資料はまったくなく、貴重な資料をものした著者にまずは敬意を表したい。
HOCamlとは、オブジェクト指向をさらに推し進めた「剽窃指向言語」の一種である。たとえば従来のスクリプト言語でも、CPANやgemなどで他人が公開したモジュールをぶっこ抜いてきて、
「やったー。できたー。
オレって天才~」
などと早とちりすることはできた。しかし、ぶっこ抜けるのはあくまでモジュールだけであって、呼び出す本体のコーディング作業は無能なプログラマ本人がしなければならないという点が課題として残されていた。IT業界独特の生産性の低さは、ここから来ているとの指摘もある。
剽窃指向言語のHOCamlは、新たに取り入れられた「剽窃」の考え方によりこの問題を解決。どんなプログラムも、googleで検索して適当なサイトからコピペしてくることで自動生成できるようになった。生産性は著しく高く、学部卒3か月の新人ですら大型ECサイトを構築することができた…などの事例が本書で取り上げられている。これはRuby on Railsなどというキモいフレームワークさえしのぐ効果であり、今後企業現場で続々採用が進むことは間違いないだろう。また、GPLライセンスのライブラリに剽窃を適用する方法も紹介されており、狂信的GNU信者の攻撃からほっかむりをして逃げる際の参考になりそうだ。
またAppendixとして、HOCamlの拡張モジュールもいくつか紹介されている。生成コードを自動添削してくれる「Dan::Kogai」や、セキュリティホールを指摘してくれる「HiromiChu」だ。前者はPerlへの依存性が高すぎること、後者はひたすらうっとうしい…など未完成な部分がまだまだあるものの、将来性を考えれば今から手をつけておいても早すぎることはないだろう。HOCamlで次世代プログラミングに触れてみたいという向きには、まさにおすすめの一冊だ。